佐木隆三著『身分帳』を読んだ感想

私的評価

佐木隆三著『身分帳』を図書館で借りて読みました。

この本を読むきっかけとなったのは、西川美和監督の映画『すばらしき世界』を観たからです。映画としては、私の評価は星5つ(満点)で、とても印象に残る素晴らしい映画でした。ということで、その原作本も読んでみたい、そんな気持ちになって読んだわけです。

概ね、本の中のエピソードは映画で描かれていました。しかし、私の中で一番違った印象を持ったのが、それぞれの主人公であるこの本の主人公・山川一と、映画の主人公・三上正夫でした。どちらかと言えば本の主人公である山川の方が、生きづらい娑婆の生活をそれなりに楽しんで謳歌していたように感じました。

手先は器用だが、生き方は不器用。山川の身分帳の記録や各種規則の箇所は、興味深いです。

★★★★☆

『身分帳』とは

内容紹介
映画監督西川美和が惚れ込んで映画化権を取得した、
『復讐するは我にあり』で知られる佐木隆三渾身の人間ドラマ! 
映画『すばらしき世界』(2021年2月公開)原案。
復刊にあたって、西川美和監督が書き下ろした解説を収録。

人生の大半を獄中で過ごした前科10犯の男が、極寒の刑務所から満期で出所した。
身寄りのない無骨者が、人生を再スタートしようと東京に出て、職探しを始めるが、
世間のルールに従うことができず、衝突と挫折の連続に戸惑う。

刑務所から出て歩き始めた自由な世界は、地獄か、あるいは。
伊藤整賞を受賞した傑作ノンフィクション・ノベル。

著者紹介
佐木隆三[サキリュウゾウ]
1937年、朝鮮咸鏡北道生まれ。1963年、「ジャンケンポン協定」で第3回新日本文学賞、76年、「復讐するは我にあり」で第74回直木賞を受賞、映画化もされた。91年、本作「身分帳」で第2回伊藤整文学賞を受賞。

講談社BOOK倶楽部

感想・その他

この文庫版には「行路病死人」も収録されており、山川一のモデルとなった田村明義さん(1990年死去)の死後について書かれています。行旅死亡人とは、日本において、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者を指す言葉であり、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称だそうです(「行路」は間違いで「行旅」が正しいそうです)。この「行路病死人」こそ、田村さんの人となりが一番よく分かります。

著者の佐々隆三氏の著書には、あの有名な「復讐するは我にあり」があります。とは言え、私は本を読んでもいないし映画も観ていません。こちらも実在した西口彰事件を題材にしており、「戦後最悪の連続殺人」と言われる犯人の犯行の軌跡と人間像に迫っているようで、とても興味が湧いています。

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