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浅田次郎著『帰郷』を読んだ感想

私的評価

浅田次郎/著『帰郷』を、図書館で借りて読みました。

久しぶりの浅田次郎作品。この本と似たような内容と思われる『歩兵の本領』が大好きな作品なので、この本を見つけた時は喜びに震えました。

この本にある6編の短編小説のうち、表題作でもある「帰郷」が、一番好きな作品でした。主人公は全滅した部隊の生き残りとなり復員しますが、故郷に帰れば弟と一緒になった嫁と子。家族に合わず、戦死したままにして故郷を後にします。最後の結末に希望があり、明るい気持ちにさせてくれました。
一番浅田次郎らしい作品だと思います。

その他の話もどれもよく、一気読みできます。

★★★★☆

『帰郷』とは

第43回大佛次郎賞受賞
もう二度と帰れない、遠きふるさと。
学生、商人、エンジニア、それぞれの人生を抱えた男たちの運命は「戦争」によって引き裂かれた――。戦争小説をライフワークとして書く著者が、「いまこそ読んでほしい」との覚悟を持って書いた反戦小説集。

戦後の闇市で、家を失くした帰還兵と娼婦が出会う「帰郷」、ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工を主人公にした「鉄の沈黙」、開業直後の後楽園ゆうえんちを舞台に、戦争の後ろ姿を描く「夜の遊園地」、南方戦線の生き残り兵の戦後の生き方を見つめる「金鵄のもとに」など、全6編。

著者紹介
浅田次郎[アサダ ジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を受賞。その他、「天切り松 闇がたり」シリーズや、『一路』『黒書院の六兵衛』『獅子吼』など著書多数。日本ペンクラブ会長。

集英社

感想・その他

私は昭和39年生まれ。子供の頃は、名古屋駅などに行くと、まだ傷痍軍人さんを見掛けました。改めて考えると、そんな頃はまだ戦後から20数年しか経っていなかったわけです。

戦争は知らない。だが、ゆえなく死んで行った何百万人もの兵隊と自分たちの間には、たしかな血脈があった。

ジャングルの中や船艙の底や、凍土の下に埋もれていった日本人を、外国人のように考えていた自分が、情けなくてならなかった。

ほんの70年ほど前、このように闘って死んでいった我々の祖父,曾祖父がいたんです。反戦小説と言いつつも、「不寝番」に出てくるこの文書が、一番書きたかったことなのではないでしょうか。

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