伊藤薫著『八甲田山消された真実』を読んだ感想

私的評価

伊藤薫/著『八甲田山消された真実』を読みました。

本としては、ちょっと読みにくいです。膨大な資料を丹念に調べ上げ、それを文書にしたのでしょうが、それをうまく表現できていないような感じです。

残念だったのは、この本がほとんどの人物を糾弾していることです。第5連隊の津川連隊長や、第31連隊の雪中行軍を成功させた福島大尉まで及びます。津川連隊長に関しては分かりますが、福島大尉に関しては、かなり著者の主観が入っているように感じられ、また、かなりの部分で「こじつけ」があるように思われました。ただそう思うのは、これまでの私の「八甲田山の雪中行軍遭難」のイメージが壊されたから、とも言えます。

★★★☆☆

『八甲田山消された真実』とは

「八甲田山雪中行軍」とは何だったのかその真相に迫った渾身の書
「天は我を見放したか」という映画の著名なフレーズとは大違い、新発見の事実を丹念に積み重ね、青森第5連隊の悲惨な雪行行軍実態の真相に初めて迫った渾身の書、352頁にもわたる圧巻の読み応え。
1902(明治35)年1月、雪中訓練のため、青森の屯営を出発した歩兵第5連隊は、八甲田山中で遭難、将兵199名を失うという、歴史上未曾有の山岳遭難事故を引き起こした。
当時の日本陸軍は、この遭難を、大臣報告、顛末書などで猛烈な寒波と猛吹雪による不慮の事故として葬り去ろうとした。1964年、最後の生き証人だった小原元伍長が62年間の沈黙を破り、当時の様子を語ったが、その内容は5連隊の事故報告書を疑わせるものだった。地元記者が「吹雪の惨劇」として発表、真実の一端が明らかにされたものの、この遭難を題材にした新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』(1971年、新潮社)と、映画『八甲田山』(1977年、東宝、シナノ企画)がともに大ヒット、フィクションでありながら、それが史実として定着した感さえある。
著者は、その小原元伍長の録音を入手、新田次郎の小説とのあまりの乖離に驚き、調査を始めた。
神成大尉の準備不足と指導力の欠如、山口少佐の独断専行と拳銃自殺の真相、福島大尉のたかりの構造、そして遭難事故を矮小化しようとした津川中佐の報告など疑問点はふくらむばかりだった。
そこで生存者の証言、当時の新聞、関連書籍や大量の資料をもとに、現場検証をも行なって事実の解明に努めた。
埋もれていた小原元伍長証言から事実の掘り起こし、さらに、実際の八甲田山の行軍演習、軍隊の編成方法、装備の問題点など、軍隊内部の慣例や習性にも通じているの元自衛官(青森県出身)としての体験を生かしながら執筆に厚みを加えた。

目次
1.現代の八甲田演習
2.遭難前史
3.行軍準備
4.行軍開始
5.彷徨する雪中行軍
6.捜索と救助
7.三十一聯隊の田代越え
8.山口少佐死因の謎

山と渓谷社

感想・その他

中学生の頃に観て、とても印象に残った映画の一つである『八甲田山』。それからテレビで放映されるといつも観ていました。もう何年も前になりますが『八甲田山 完全版』なるDVDも購入し、いつでも観られる状態になってます。20代の頃には、オートバイで青森県へ行き、雪中行軍遭難記念像の前で記念撮影もしました(ずっと、この象は神成大尉だと思っていましたが、最初に発見された後藤房之助伍長ということが、この本で分かりました)。

その後、新田次郎の原作『八甲田山死の彷徨』を読みました。高木勉著の『八甲田山から還ってきた男―雪中行軍隊長・福島大尉の生涯』も数度読みました。そして、この『八甲田山消された真実』という本の存在を知り、図書館で借りてきました。

フィクション要素が多い『八甲田山死の彷徨』ではありますが、読み物として一番面白いのはやはりこの本ですね。まあ、著名な作家さんが書いているので当たり前と言えば、当たり前ですが。『八甲田山から還ってきた男…』の方は、福島大尉の親戚筋の人が書いているので福島大尉寄りの内容になっています。しかし、この本により私の八甲田山の雪中行軍遭難に対する感じ方はかなり変わりました。そしてこの『八甲田山消された真実』を読んだ今でも、私の中の「八甲田雪中行軍遭難事件」は『八甲田山から還ってきた男…』の内容が一番しっくりしています。


八甲田山 消された真実


八甲田山から還ってきた男―雪中行軍隊長・福島大尉の生涯


八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

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