村木嵐著『まいまいつぶろ』を読んだ感想

2025年1月8日水曜日

小説 読書

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私的評価

村木嵐著『まいまいつぶろ』を図書館で借りて読みました。

徳川9代将軍・家重と、その通詞であった大岡忠光との感動的な物語です。
家重の不明瞭な言葉を唯一理解することができた忠光が通詞となり、家重が将軍になるまでの二人の交流は、涙なしでは読めないほど心を揺さぶられるものでした。特に、忠光が家重を支え続ける姿には、深い絆と献身の美しさが感じられます。
ただし、後半の家重が将軍になって以降の描写については、前半に比べてやや盛り上がりに欠け、物語の面白さが少し減少した印象を受けました。それでも、物語の終盤に描かれる家重と忠光の別れのシーンは、非常に印象的で、読後も心に深く残るものがあります。

静かな感動を求める方に、ぜひお勧めしたい一冊です。

★★★★☆

『まいまいつぶろ』とは

村木嵐著、2023年5月に幻冬舎から発刊されました。第12回 日本歴史時代作家協会賞作品賞、第13回 本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞しました。

出版社内容情報
暗愚と疎まれた将軍の、比類なき深謀遠慮に迫る。口が回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重。しかし、幕府の財政状況改善のため宝暦治水工事を命じ、田沼意次を抜擢した男は、本当に暗愚だったのか――? 廃嫡を噂される若君と後ろ盾のない小姓、二人の孤独な戦いが始まった。

内容説明
口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ蔑まれた君主がいた。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫。麻痺を抱え廃嫡を噂されていた若君は、いかにして将軍になったのか。第九代将軍・徳川家重を描く落涙必至の傑作歴史小説。

著者等紹介
村木嵐[ムラキラン]
1967年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。会社勤務を経て、95年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなり、後に司馬夫人である福田みどり氏の個人秘書を務める。2010年、『マルガリータ』で第十七回松本清張賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

紀伊國屋書店

感想・その他

徳川15代の将軍の中で、広く名前が知られているのは、初代、2代、3代、5代、8代、そして15代だけと言えるでしょう。この小説に登場する家重は、8代将軍・吉宗の長男です。出生時に臍の緒が首に絡まった影響で、脳性麻痺と推測される言語の不明瞭さや身体の麻痺を抱えていた人物として描かれており、物語は進んでいきます。
実際に家重がこの小説で描かれているような重い症状を抱えていたかどうかについては史実として明らかではありませんが、少なくとも、何らかの障害があった将軍であったのは事実であるようです。

評価
『徳川実紀』には、「近習の臣といえども、常に見え奉るもの稀なりしかば、御言行の伝ふ事いと少なし」・「御みずからは御襖弱にわたらせ給ひしが、万機の事ども、よく大臣に委任せられ、御治世十六年の間、四海波静かに万民無為の化に浴しけるは、有徳院(吉宗)殿の御余慶といへども、しかしながらよく守成の業をなし給ふ」と記されている。つまり、無能な将軍だったが、幕閣の大岡忠光や父・吉宗の遺産もあって、平穏を保ったと言われているのである。
Wikipedia(徳川家重)

いくら頭の中が聡明でも、口で伝えることも字を書いて伝えることもできなければ、Wikiの評価のようになってしまうのでしょう。

そしてもう一人の主人公、大岡忠光。彼は将軍・家重の言葉を正確に汲み取り、意のままに伝えることができた人物でした。しかし、その能力を誇示することもなく、また幕政に口を挟むような振る舞いを決してしなかったと伝えられています。その謙虚で誠実な姿勢が、家重との深い信頼関係を築いた要因の一つだったのではないでしょうか。
忠光が亡くなると、家重は間もなく長男の家治に将軍職を譲り、自らは大御所として隠居します。この出来事からも、忠光の存在が家重にとっていかに大きかったかが伺えます。
ところで、「大岡」といえば多くの人が思い浮かべるのは「大岡越前」こと大岡忠相ですが、忠光の父・忠利と忠相ははとこ(またいとこ)の関係にあるそうです。この意外なつながりにも歴史の面白さを感じさせられます。



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1964年生まれ。糖尿病を患ってから、自転車と歩くことを趣味にしています。毎日クスリ飲んでます。

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